死んでから見つけてください

まだ生きてるけど

私の住む田舎から、都会のような場所へは電車一本、およそ30分揺られれば着く。雨の日が続くからか、車内には人がまばらで、その大半が学生服に身を包んでいた。

私の斜め前に座っていた彼らは、片方が参考書を読み、もう片方はスマホに夢中なようだった。靴下以外はおそろいの布に包まれた彼らは、時折お互いの膝や太ももを触り合っていた。それがなにを意味するのかはわからない。太ももの奥に手を伸ばし、片方が体を震わせ、そこで手は止まる。これはあまり良くないことだけど(これが成り立ってしまう社会のせいにさせてくれ)、制服の紋章から彼らの学校がわかった。あまり偏差値は高くない男子校で、運動の部活動が盛んなようだった。そうか、と思った。そういう、今しかできないとは言わないけど、卒業してしまったら、どちらかは普通に恋愛して普通に異性のケツを追いかけてしまうような、そういう未来を、見た気がする。片方が、途中で電車を降りていった。もう片方が少し悲しそうな顔をして、参考書に目を戻した。また明日会える保証がある関係をとても羨ましいと感じた。何歳かもわからない彼らだが、卒業したら、また明日会う関係は終わってしまうけど、お互いのことをたまに思い出すんだろうなと思い、それも羨ましかった。誰かの記憶に棲むことってそう簡単じゃない、忘れられたくないって、どう考えても傲慢だ。なのに、私はどうして、誰かの記憶にいようとするのだろう。どうすれば、誰かの心に棲めるのだろう